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開発者インタビューvol.3 キャンプの“理想の過ごし方”を叶える 3つのチェアに込めたデイトナの思い
2025.10.22

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キャンプに欠かせないアイテムのひとつ、チェア。この秋、デイトナからタイプの異なる3モデルが登場。軽量かつコンパクトながら“くつろぎ”を追求した「WIDE/RESTチェア」、定番モデルをブラッシュアップした「コンパクトチェアMIL2」、そしてロースタイルを極める「ハイバックローチェアMIL」。それぞれの誕生の背景やこだわりについて、開発担当の落合さんに話を聞いた。
01.新しい“くつろぎ”のスタイル「WIDE/RESTチェア」
──「ひじ掛け付き」というアイデアは、どのようにして生まれたのですか?
市場にある多くのコンパクトチェアは、確かに軽くて収納性に優れていますが、「ひじ掛け」が付いているものはほとんどありません。でも、ひじを置けるだけで、座り心地って格段に良くなるんですよね。なんとかしてコンパクトチェアにもひじ掛けを付けられないかという思いが、開発の原点でした。
もう何年も前からの企画でして、当初は、チェアの側面に生地を縫い付けるシンプルな方法を試したんです。立体裁断にしたらなんとかなるんじゃないかと。。。
既存モデルの座面にひじ掛けになる生地を縫い付けて、いくつか試作を重ねましたが、ひじを置くと外に力が逃げてしまってうまく機能しませんでした。
なかなか形にならず、一度は断念してお蔵入りしてしまったんです。
開発を担当したデイトナアウトドアグループの落合さん
──そこから、どうやって復活したのでしょう?
それから1年ほどたった頃、取引先の工場で、ふと目に留まったサンプルがきっかけでした。原型の詳しい構造は言えませんが、「あれ!これ、作りたかったものだ!」って思ったんです。
直ぐにサンプルを取り寄せてテストしてみたのですが、あまり良いものではありませんでした。
ひじを置いたときに布がまくれてしまい、ひじ掛けとしての機能は過去に自分が試作したものと大差なく、さらには、フレーム強度にも問題があって。
自分より、一回り体格の良いスタッフに座ってもらったら「バキッ!!」って。直ぐに壊れちゃって、ひじ掛け以前に、チェアとしての機能も満たしていない仕様で、まだまだ課題が山積みでした。
脚のフレームからジョイントを通じ、ひじ掛けを支えるアームが伸びる。
──その課題を、どのようにしてクリアしていったのですか?
まずは、ひじ掛けの外側をベルトでしっかり固定することで、ひじを置いたときにも安定感が出るようになりました。さらに、当初はバックルでつないでいた部分を、コスト、軽量化、使いやすさを優先して、フックに変更しました。そうした細かな仕様変更を何度も繰り返しながら、ようやく「これはいける」と思える形に仕上げることができました。
ひじ掛け部分はベルトで調整可能。体型や座り方に合わせて、自分だけの“ベスポジ”が作れる。
──そんな苦労があって他社では見かけない、ひじ掛け付きのコンパクトチェアが誕生したんですね。
ひじ掛け部分については特許を出願中です。左右のひじ掛けにはドリンクホルダーがあり、飲み物やスマホを手元に置けるのも便利。テーブルを出さずにくつろげるので、キャンプはもちろん、最近人気の「チェアリング」でも活躍してくれると思います。
──クラウドファンディングの「Makuake」でも好評だったとか?
はい。おかげさまでデイトナ史上最多の応援購入数と「いいね」数を獲得できました。「コンパクトで、しかもひじ掛け付き」という、今までにない仕様に多くの方が関心を持ってくださった証拠だと思います。
WIDE/RESTチェア(ワイドレストチェア) ¥9,900(税込)
WIDE/RESTチェア(ワイドレストチェア)の
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02.信頼性が進化した定番モデル「コンパクトチェアMIL2」
──続いて、スタンダードモデルとなる「コンパクトチェアMIL2」について教えてください。
このチェアは、軽量・コンパクトながら座り心地も良く、携帯性と快適性が両立した定番モデルです。先代からの最大の進化は、フレームや縫製精度の強度が大きく向上したこと。これにより、全体の信頼性が高まりました。
──具体的には、どんな点が改良されたのですか?
横に渡るパイプですが、前作は1本だったんで背もたれ側と脚側が、組み立てるときに天地逆になっちゃう事があって、ちょっとだけなんですが、組み立てにくさを感じるポイントだったんです。ここを2本にする事で組立時のストレスを解消して、強度もアップしています。
また、前作同様フレームには、航空機の構造材にも使われるほど軽くて丈夫な「A7075(超々ジュラルミン)」を採用しています。
横に渡るパイプを2本にすることで強度が増し、組み立てやすくなった。
──左右にあるパルステープやDカンも特徴的ですね。
はい。コンパクトチェアって、収納袋が意外と行方不明になりがちなんです(笑)。そこで、収納袋をサイドに固定してポケット代わりに使えるようにしました。また、Dカンがあることで、袋をチェアの下にも取り付けられるので、自分の使い方に合わせてカスタマイズできます。
パルステープは両サイドにあり、収納袋をサイドポケット代わりに使える。
──収納袋にもパルステープやDカンがありますね。
「コンパクトチェアMIL2」の収納サイズは幅37cmとコンパクトで、バイクのシートバッグにも楽に入るサイズです。でも、仕切りがないバッグだと、中でゴチャついてすぐに取り出せない。ツーリング後、キャンプ場に着いて「ちょっと座りたい」って思ったときに、サッと取り出せるように、ベルトでバッグの外に固定できる設計にしています。
ライダーの気持ちをくんだ、デイトナならではの機能性が追加されている。
──細かな工夫が、実際の使用シーンに合っていますね。
「コンパクトチェアMIL2」は、高価格帯チェアと安価な鉄フレーム製品の中間に位置する、コスパの良いモデルです。性能と価格のバランスが良く、アウトドア初心者から経験者まで幅広くおすすめできます。もちろん、耐荷重テストや衝撃試験などもクリアしており、安全面も問題なし。おかげさまで、アウトドアショップさんでもご好評をいただいています。
コンパクトチェアMIL2 ¥6,985(税込)
03.天井の低いテントでも快適にくつろげる「ハイバックローチェア」
──最後に、「ハイバックローチェア」について教えてください。
ソロキャンプで使われるテントって、意外と天井が低いものが多いんです。一般的なチェアだと、座ったときに頭がテントの天井にぶつかってしまって、窮屈だったり、そもそも入らなかったり。その課題を解決するために“低くてゆったり座れるチェア”として開発したのが「ハイバックローチェア」です。実は今回の3モデルの中で、いちばん苦労したアイテムでもあります。
──どんな点に苦労されたんですか?
開発初期のモデルは、背もたれが高くて角度が寝ている分、バランスが不安定で……。深くもたれかかったときや、無人の状態で風を受けたときに、すぐに後ろに倒れてしまうんです。さらに、柔らかい地面で使うと脚が沈んで、お尻が地面に触れてしまうという問題も発生しました。
そこで、脚の後方にサポートパイプを1本追加しました。これによって「転倒防止」「沈み込み防止」「風による転倒防止」の3つの課題を同時にクリアできたんです。
このサポートパイプを加えたことで、安定感がグッと向上した。
──構造の細部にもこだわりがありそうですね。
そうですね。こだわりと言うより最後の難関で、詳しくは言えないのですが、座面下部分と脚を接続する部分に課題がありまして。
座面側のフレームポケットの深さや、フレーム側のパーツ形状や寸法を何度も調整して、ようやく「これだ!」という形にたどり着きました。
座り続けても座面が抜けないよう、ミリ単位で調整。
座面には引っぱりループがあり、組み立ても簡単。
他の2モデルに比べて、背もたれが頭まで支えるデザインなので、体をあずけると自然にリラックスできるのが特徴です。キャンプ場で本を読んだり、コーヒーを飲みながらのんびり過ごしたり。そんな“何もしない贅沢”にぴったりのチェアです。
ハイバックローチェアMIL ¥8,965(税込)
04.ユーザーの声を形にする、デイトナ流ものづくり
──改めて3つのモデル、それぞれのコンセプトや特徴を教えてください。
まず「WIDE/RESTチェア」は、コンパクトに収納できるのに、ひじ掛け付きというのが大きな特長です。軽快さを求めるスタイルでも、しっかりくつろぎたい。そんな欲張りなニーズに応えたチェアです。テーブルがなくても、ひじ掛けのドリンクホルダーに飲み物やスマホを置けるので、身軽に過ごせるのもポイントですね。
「コンパクトチェアMIL2」は、スタンダードモデル。軽量・コンパクトでありながら、耐久性も高く、座り心地も快適。価格と性能のバランスも良く、最初の1脚としておすすめできます。
「ハイバックローチェア」は、低めのテントでも快適に過ごせるよう、座面を低く、背もたれを高く設計しています。のんびり本を読んだり、焚き火を眺めたりするような、ゆったり過ごしたい方にぴったりです。
商品名 | WIDE/RESTチェア | コンパクトチェアMIL2 | ハイバックローチェアMIL |
価格 | ¥9,900 | ¥6,600 | ¥8,965 |
収束方式 | 折りたたみ式 | 折りたたみ式 | 折りたたみ式 |
重量 | 約1.5kg | 約1.1kg | 約1.4kg |
静止耐荷重 | 120kg | 120kg | 120kg |
材質 |
座面:ポリエステル フレーム:A7075 |
座面:ポリエステル フレーム:A7075 |
座面:ポリエステル フレーム:A7075 |
本体サイズ 約(mm) |
H670×W850×D560 座面高さ:350 |
H700×W550×D490 座面高さ:350 |
H740×W550×D690 座面高さ:230 |
収納寸法 約(mm) |
H410×W120×D150 | H370×W130×D110 | H430×W130×D120 |
付属品 | 収納袋 | 収納袋 | 収納袋 |
──3つのチェアがそろったことで、選びやすくなりましたね。
そうですね。チェア選びって“理想の過ごし方”に直結していると思うんです。あとはデイトナの「フラットアルミテーブル520」を一緒に使っていただけたら、完璧ですね(笑)。高さ調整ができるので、どのチェアとも相性がいいんですよ。
──開発には、ユーザーからの声も反映されているのでしょうか?
はい。キャンプ系のイベントに出店した際にいただくフィードバックやクチコミは、製品開発の大きなヒントになっています。例えば、マエヒロドームテントのインナーは、リピート生産のタイミングでフルメッシュからフルクローズタイプへと変更しました。
こうした声を取り入れながら、製品を使いやすく改良していくサイクルが、デイトナにはあります。チェアについても、今後ぜひいろいろなご意見を聞かせていただけたらうれしいですね。
開発したチェアは、森町に誕生したライダー交流拠点「バイクの森」でも展示している。
──ものづくりで大切にしているポイントは。
基本的には、バイク乗りに向けて作っているんですが、あまり枠にとらわれず、いろんな方に使ってもらえたらうれしいなと思っています。全部が全部そうというわけではないですが、ちょっとしたところに“気の利いたデザイン”を入れるようにしています。
素材にしても、例えばペグハンマーの柄にはブナやウォールナットといった木材を使うなど、細かいところにこだわりがあります。ただ、それを“わかる人だけに伝わればいい”というのではなくて、ちゃんと多くの人に気づいてもらえるような工夫を心がけています。
──今後の展開を教えてください。
現在、「WIDE/RESTチェアのハイバック版」の開発に着手しています。ただ、ひじ掛けの位置や全体の幅など、調整すべき点が多く、製品化まではもう少し時間がかかりそうです。一方で、「折りたたみスツール」は試作がほぼ完成していて、近いうちに発売できる見込みです。これは、座るのはもちろん、クーラーボックスの置き台などにも使える便利なアイテムです。チェアはテントに次いで滞在時間が長くなる道具ですから、今後もラインナップを強化していきたいと考えています。
- WIDE/RESTチェア(ワイドレストチェア) ¥9,900(税込)
WIDE/RESTチェア(ワイドレストチェア)の
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- コンパクトチェアMIL2 ¥6,985(税込)
- ハイバックローチェアMIL ¥8,965(税込)
【取材ロケ地協力】
バイクの森