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軽量コンパクトなのに高強度の世界【20Dリップストップナイロン】

2025.06.20(最終更新日:2025.06.25)

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こんにちは、デイトナアウトドア開発担当の森山です。
皆さんはDAYTONA OUTDOORSで人気の「マエヒロシリーズ」をご存じですか?
マエヒロシリーズとは「軽量・コンパクトで広々な前室(※1)」を備える弊社のイチオシラインです。

(※1)前室(ぜんしつ)とは、テントの入口部分にある屋根付きのスペースのこと。

「広い空間」と「軽量・コンパクト」、この相反する要素を実現する要となるのが、生地素材である「20Dリップストップナイロン」です。今回は、テントの要となるフライシートの生地素材についてご紹介します。

テントに使われる生地はどんなものがある?

みなさんはテントに使われる生地に、どんな種類があるかご存じでしょうか?ここでは、「TC」や「20Dナイロン(※2)」など、代表的な生地についてご紹介します。

(※2)D(デニール)とは糸の太さを表す単位で、9000mの長さで糸の重量が1gになる太さを1D(デニール)と呼びます。つまり、20Dナイロンとは、20デニールのナイロン生地のことです。

70D前後のポリエステル

生地が低価格で、コンパクト系テント用素材としてバランスが良く、最も一般的に使われています。

TC

「TC」とは、ポリエステルとコットンの混紡生地のことです
ポリエステル65%コットン35%という混紡率が一般的で、通気性が良く、透湿性もあるので結露しにくく、厚みがあり遮光性もある。火の粉にもポリエステルやナイロンよりは溶けにくいと言ったように、コットンと化学繊維の良さを持ち合わせます。

良い面が多い反面、耐水圧は低いものが多く、雨天にはあまり向きません。また、濡れてしまうと重く、カビ易いといった点もあります。

TCはアパレルでも良く使用されますが、「60/40ナイロン」で有名なナイロンとコットンの混紡生地と比較するとかなり安価な素材ですコストパフォーマンスに優れた素材ですが、ナイロンやポリエステルといった化学繊維100%の生地と比較すると重量があるため、『軽量コンパクト』を重視する場合には選択肢から外れてしまいます。

20Dナイロン

15-30Dのナイロンは高価だが、軽量でコンパクトな生地です。「UL(ウルトラライト)系」に使われるが、高額になるため、生地面積の大きい大型テントでの採用は珍しいです。

番外編:5~10Dナイロン

非常に薄く、超高コストな高級生地。最上位のシュラフやダウンジャケットの裏地などに使用される。

※生地単価の“高い安い“は、同じデニールであっても生地の織り方や種類、表面の処理、メーカーによって異なるため一概には言えませんが、テントやアパレルやバッグといった商品を取り扱う弊社経験値に基づいた独自の感覚を元に解説させて頂いております。

20Dリップストップナイロンってどんな素材?

「20Dリップストップナイロン」とは、20Dの「リップストップ構造(※3)」をもったナイロン生地のことです。

(※3)「リップストップ構造」とは強度の高い糸を格子状に織り込むことで、軽さと強度を両立させる織り方を指します。この構造を採用したことで、薄手でありながらも高い耐久性を引き出すことができていることが特徴です。

ナイロン生地は「1680Dバリスティックナイロン」に代表される様に、通常、生地は厚くて頑強なものが高価ですが、単純に『薄くければ安い』というものではありません。

20Dナイロンの様に、非常に薄いものになると生地自体もそうですが、縫製や仕上げといった生産全般において、高度な技術が求められます。その為、このクラスになると薄ければ薄いほど生地の価格も高くなります。

「20Dリップストップナイロン」は高性能な山岳テント(※4)に多用されています。
登山テントに要求される強度などを満たしたうえで、軽量で、商品設計上非常にバランスが良いからだと思います。

(※4)山岳テント(登山用テントとも)は、山の中で使うことを想定された比較的小型なテントです。

なぜナイロンなのか?

リップストップ構造は、テント等の素材で多く使用されるポリエステルをはじめ、さまざまな素材に応用できます。ただ、マエヒロシリーズでは、あえてナイロンを選択しています。

その理由として、
・ナイロン自体はポリエステルと似た特徴を持っている
・伸縮性や耐摩耗性に優れている
・色あせしにくい
という3つのメリットがあるからです。

特に色あせについては、弊社では工業試験場にて行うロングライフフェードメーター
(※5)を、テント用生地のみならずバッグやライディングウエアといった、オートバイ用品の企画開発でも、生地を使う多くのアイテムで古くから繰り返し行ってきました。

(※5)ロングライフフェードメーターとは、紫外線による製品や部品の耐久性を調べる装置です。

また、私たちの経験上では、ナイロン生地はポリエステルと比較し、圧倒的に退色が少ない傾向があります。お客様に安心してお使いいただくために、マエヒロシリーズのフライシートでは、20Dリップストップナイロンを選択しております。

キャンプツーリングを行う方々のために採用された軽量性と強度のバランス

じつは、テントの使用方法が寝るだけであれば、超コンパクトな山岳テントでも充分です。

実際に私自身、かつてのキャンプツーリングでは山岳テントを愛用しておりました。しかし、キャンプを快適に楽しもうとすると、広い前室や寝室が欲しくなってきます。

ただ、広くしていくと当然生地は大きくなるし、フレームも大きくなりますので、収納サイズはどんどん大きくなってしまいます。そこで、従来の68Dポリエステル素材から、新たに「20Dリップストップナイロン」を採用しました。

1平方メートルあたりの重量で換算すると、約30%の軽量化に成功。テントで一番かさばる生地部分を削るために、軽さ・薄さ・強度のバランスの取れた、「20Dリップストップナイロン」を私たちはチョイスしています。

用途に適したギア選びと軽量テントの重要性

やはり、用途にあったキャンプギア(道具)選びが大事だと思います。
「ツーリングキャンプ」と「登山」、「ファミリーキャンプ」。似ているようで、それぞれに最適な装備は異なります。

防寒対策のウエアに例えると、寒さを“しのぐ”という意味では、スノーボードとオートバイ、フィッシングなど、様々なジャンルがありますが、それぞれのどれかのウエアで代用できなくはありません。しかし、使用環境や使用する速度域、転倒に対する安全性など、必要要素がそれぞれ異なりますので、良い選択とは言えません。

キャンプツーリングに山岳テントを使用するという選択は、例えるとスキーウエアでオートバイに乗る様なアンマッチでしょうか。

テントやシェルターとしての快適性をしっかり確保しつつ、軽量コンパクトに仕上げられる「20Dリップストップナイロン」は、そんな方々の想いに応えるために欠かせない選択肢となりました。

素材を通じて伝えるDAYTONA OUTDOORSが目指す世界

「20Dリップストップナイロン」を選んだのは、何よりも軽量化と強度の両立にこだわった結果です。DAYTONA OUTDOORSでは、どの商品にも根本に「軽量コンパクト」であることを大切にしています。

荷物の負担を気にしない中で、実際のキャンプでは妥協せずご自身のアウトドアスタイルを楽しんで欲しい。

そんな私たちの開発への想いを、「20Dリップストップナイロン」が実現してくれたと感じています。

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